トヨタ労組ベアで横並び脱却、実力評価へ
春闘と言えば、昔はよくストライキで電車が止まったりして、皆で団結して使用者側に労働条件の改善を迫るものというイメージが強いのです。ベア(ベースアップ)等はその代表で一律10000円、20000円賃上げの要求をするのが当たり前でした。
それが今後は変わっていく様です。トヨタ自動車労働組合が2020年春季労使交渉(春闘)で新たな賃上げの仕組みを要求する様です。
トヨタ労組、ベアで脱・横並び「評価で5段階」要求へ こんな見出しで2020年12月26日付けの日本経済新聞が報じました。
今後労働者の評価は年功序列から、その働きぶりにより評価され、それに見合った賃金をもらう、成果・実力評価に代わっていくのでしょうか。
組合の変化
昨年の春闘はどうだったのかというと下記の様な交渉を行っています。
今季の労使交渉で会社側は「一律で配分するのではなく、プロを目指し成長し続ける人に報いていきたい」と説明している。西野委員長は「頑張った人が報われることに異存はない」と語る一方、「全員に配分されるものがないというのは、一体感という観点から受け入れがたい」と強調。賃上げに対する労使の姿勢の違いが浮き彫りになった。
日本経済新聞 2019年3月5日付記事より引用
会社側は昨年から一律配分ではなく成長し続ける人に報いたいと、以前から言っていたようですね。
それに対して労組側は全員に配分されないと一体感の観点から受け入れがたいと拒否しています。
今年は一転して方針を変えたようです。いや変えざるを得なかったのかもしれません。
トヨタ社長の発言
今年の5月13日の日本自動車工業会の会長会見でトヨタ自動車の豊田章男社長は下記の様にのべています。
「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」
この発言は各方面で話題となったのでご存じの方も多いのではないでしょうか。
トヨタといえば、一度入ったら一生安泰、終身雇用、年功序列でゆりかごから墓場までといったイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。そのトヨタの社長の発言という事で、その影響力は大きく、終身雇用という神話の崩壊にとどめを刺す発言だったと思います。
この発言を受けて今回の労組側の新たな要求となった経緯があります。
トヨタ社長の発言には自動車産業のこれからの展望に懸念を示したもので、これまでも、業績は好調であるにのも関わらず厳しい発言が多かったです。
よく言われる事ですが、これからは電気自動車の時代と言われます。動力がガソリンエンジンからモーターに変わると何が変わるかというと自動車を構成する部品が半減します。エンジン自動車の部品点数は約3万個といわれています。これに対して電気自動車はおよそ半分の部品で済むと言われています。これは何を意味するのかというと新規参入のハードルが下がるという事です。現に中国では国をあげて電気自動車の製造を推進しています。
ひと昔前は若者はスポーツカーを保有するのがある種のステータスでしたが、今はそんな若者を探す方が大変です。車は単なる移動手段になってしまい、都会に住む人など他の移動手段に置き換える事が出来る人は車を持っていないという人も多いでしょう。この様に日本ではすでに車が売れなくなっています。先進国では特にこの傾向が強いです。ここでの言及はさけますがMaaSという考え方もでてきており公共交通機関もこれから変革していきます。
すでに世界に主戦場を移しているトヨタですが、これからは新興国などの販売強化に力を入れていかないといけません。ですが先程言ったように電気自動車は新規参入が比較的容易です。振興国も新たな産業に力を入れていくでしょう。トヨタの先行きは暗いです。
自動運転の技術は革新的な技術でこれから無くてはならない技術です。完全自動運転化されると高齢者による事故も無くなり、極端な話ですが運転免許もいらなくなってしまいます。しかしこの分野でもトヨタはリードしているとは言えません。世界ではグーグルやアップルも自動運転や電気自動車にすでに参入しています。自動車は自動車会社の独自の技術では無くなってきているのは明らかです。
すみません余談が長くなってしまいました。
今後の働き方
今後は賃上げの原資を個人の評価に合わせて配分していくとの事ですので、個々の能力の差によって賃金に差が出てくる様になります。ですのでより労働の結果に重きが置かれるようになってくると思われます。
いままでは賃金による差は表面に現れていませんでしたがこれからはそれが如実に現れてきます。人によってはその仕事の向き不向きがあると思います。自分をよく知り自分に合った働き方ができるように企業側は配置転換をより柔軟にできるようにしたり、中途採用をより多く取り入れたり労働環境を整えていく必要があると思われます。今後は「私にはこれができる」と自信をもっていえるスキルが必要になってくると思います。会社は「このスキルが必要です」と募集する。それがマッチングした所で働く。会社は自分の仕事をくれる。生活を守ってくれる。そんな時代はすでに終わっているのです。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。